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仮面講座2

アフリカの大きい方の仮面は、講座1で述べた変身する猿と同じく、10年近く私の書斎の壁に掛かっている。いつもにっこりとこちらを見ている。白い顔と長いあご髭が印象的である。顔の長さは35cmもあるすこし大ぶりの仮面である。もう一つの仮面は、これもアフリカの仮面であるが、顔の長さが17㎝と小ぶりの仮面で、子ども用に作られた仮面のように思われる。今回は、これら2つの仮面について、考えてみたいのである。

大きい方の仮面は、ガボン共和国のファング族の仮面と思われる。両眼ともその下に2つの大きな黒い三角形の模様が見える。これは、入れ墨ではなく、大粒の涙ではないかと考えている。表情はにっこりと笑っているが、心の中では泣いているのだぞと言っているように読み取れる。この仮面は、葬送面として葬祭儀礼に使われたのではないだろうか。「顔で笑って心で泣く」2つの相反する感情を、同時に顔に示しているので、これを同時的背反性の仮面ということにしたのである。民俗学的考察は全くできないが、ファング族は、死者をやっと部族の神のもとに送り届けることができるということで、喜んで葬送する習性をもっているのであろうか。しかし遺族はやはり悲しい。その気持ちをダイレクトに表わしているのではないかと、私は勝手に想像して、この仮面を見ながら楽しんでいるわけである。

小さい方の仮面は、手の平ぐらいの大きさであるので、子どもが被ったのではないかと思われる。アフリカのどこの部族の仮面かはっきりとわからない。顔の表情は、少しわかりにくいがよく見ると笑っているのである。しかし、涙が両眼から噴き出ている。この仮面も、まさに「顔で笑って心で泣いている」気持ちを、仮面の表情としてあらわしている、同時的背反性の仮面と私には思える。

日本の能面ついては、小面や若女の仮面は俯いたときは少し憂いのある表情になり、すこし上向いたときは微笑んでいる感じになるといわれている。般若の場合は俯いたときは悲しみを表し少しずつ上向きになるにしたがって怒りの表情が出てくるといわれる。一つの仮面で相異する表情が出てくるわけであるが、これは能楽という芸術性の高い演技の中からにじみ出てくるものである。アフリカのこれら2つの仮面は、仮面そのもののなかに造形としてその相反性がデザインされているわけである。そう考えると、これら2つの仮面の造形はすごい創造力といえるだろう。アフリカの未開部族の創造力は、われわれ近代人よりはるかに優れているように私には思われてならない。

だだ、この解釈は自分が勝手に2つの仮面をみて想像したものであり、そう考えることによって自分のもっている仮面を楽しんでいるということなので、誤解のないようにお願いしたい。ただ、民俗仮面の楽しみ方は、そのルーツを探る楽しみももちろんあるが、この講座のようにいろいろ想像してみるともっと楽しくなると思われる。