私はいつも、山形県にある樽平酒造の「一生住吉」という日本酒を愛飲している。樽平酒造には、樽平と住吉という2つの銘柄の酒がある。住吉の酒の醸造を担当している杜氏が、住吉大社の信者であることからこの名前が付いたということである。一生住吉を注文すると、一升ビン6本の入ったダンボール箱が送られてくる。箱を開けると、ビンの間にクッションとなるダンボールが挟んである。酒のビンがなくなってくると、このクッションはいつの間にかゴミとして捨てている。今回このクッションを抜いた時、「待てよ、これで仮面を作ってみてはどうか」と思いついた。私の民俗仮面コレクション展の時の、「仮面づくり」のワークショップの見本としても役に立つ。そこで、今そばにあったアフリカの仮面を参考に、仮面を作ってみた。簡単に早くできて、それなりにカッコよくないと、子供たちには受けない。そういう方針でやってみると、意外にうまく面白い仮面ができた。耳は、さらにその切れ端で作り、顔に張り付けた。神の使いの蛇を描いた。耳を付けたことによって、酒神はさらに面白く引き締まった。ゴミとして捨てる直前のダンボールの切れ端が、こんなミステリアスな姿になるものなのか。我ながらそのギャップに驚いてしまった。住吉大明神に遣わされた酒神が突如降臨してきたのかと、一瞬そう思ったのは私だけであろうが。
【住吉の酒神Ⅰ】