世の中には「コットウ菌」がいるらしい。古物収集癖症候群をもたらすウイルスである。これに冒されると、ひどい時は家の中は骨董品の山、いわゆるガラクタ・ゴミの山となる。本人には宝の山なのであるが、興味のない家の者にはゴミの山にしか見えない。私は京都にいたとき、よく古書店回りをしていて、美術関係などの古い珍しい本をあさっていた。このとき「コットウ菌」がついたらしい。しかし、こちらに来てほとんど面白い古書店がないものだから、陰性になっていた。30歳になって仮面を一つ買ったときに、私のどこに潜んでいたのか、それ以来陽性に転じたようで、その後ずっとこの「コットウ菌」と付き合う羽目になった。幸い軽症に住んではいるが、それでも仮面収集は、今では300近くにまでなっている。もう50年近いお付き合いである。黒こげの顔には白い皺がいっぱいのわが「コットウ菌」に、「オイ、お前は私が死ぬまで付き合う気なのか?」と聞いてみたら、ニィーッと笑った。
【コットウ菌】