シャクジ

シャクジ(宿神)は、あまり知られていないが、極めて重要な日本独自の古層の神である。3000年以上前の縄文の頃から現代まで、日本人の心の奥深くに形成され潜んできたすごい神である。縄文の土器にそのすばらしい姿が造形されており、記紀神話に出てくる神々よりはるかに古い。仏教や道教の伝来した飛鳥・奈良時代以降、日本の宗教界は大きく変化していくが、シャクジは日本人の心の底にずっと生き残ってきた。仏教とともに伝来した摩多羅神と習合したり、田楽・猿楽の遊芸民の信じる神となり、やがて能楽の最も初源的な「翁」として姿を現した。今も伝統的な祭りや工芸や武芸を担う人々にとって、シャクジのスピリット(精霊)は心の中に深く生き続けている。もしあなたが突然能面を見たとき、何か心の中でビクッと感じるところがあれば、現代人としてのあなたの心の奥に、シャクジは生きているということになる。ただ私にとって、このシャクジは難しすぎてわかりにくいが、民俗仮面を収集している者としては、すこしでもわかりたい気持ちも強い。とりあえず、大それたことではあるが、このシャクジが現代社会に、例えばある祭りにひょいっと姿を現したときの顔を、大胆にも仮面にしてみた。目や口を縄文のイメージを持つ奇妙な造形にしてみたが、はたしてうまくいったかどうか。

【シャクジ】

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